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20170430:3本の ”そして誰もいなくなった” [ミステリ三昧]

 A.クリスティの最高傑作の一つとも言われるもので、閉鎖空間で童謡(数え歌)通りにお互い関連性の "無い" (← しかし真犯人にとっては "ある" )人達が順次殺されていく、いわゆる "見立て殺人" 事件
 原作は1939年に発表され、以後、著名な推理作家によって数多くの見立て殺人ものが書かれました(代表事例:僧正殺人事件(ヴァン・ダイン)、ダブル・ダブル(E.クイーン)・・・)。

 この "そして誰もいなくなった" が、TV ドラマ化され、3月25日(土)と26日(日)の二夜続けてほぼ2時間ずつ、計4時間のドラマ:
  "そして誰もいなくなった"(TV朝日系)
    脚本:長坂秀佳、 演出:和泉聖治、 出演:仲間由紀恵等
として放映されていました(旬な話で無く恐縮です)。
 視聴率も良かった様です。

 多少CGの出来の悪さは目立ったものの、原作を活かした筋書きで、面白かったです。
 いくら傑作と言っても80年近く前の時代に書かれたシナリオを今ドラマ化する意味があるのか、ネットが張り巡らされ、ケータイが普及し尽くし、ドローンが飛び回ろうとしている現代日本にどうやって置き換えるのか、絶海の孤島をどうやって実現させるか等々、いろいろと疑問が湧いて尽きなかったのですが、実際に観るといろいろな工夫が楽しめました。

 順次殺されていく10名を演ずる方々それぞれが主役級の役者さんで、恐らくは "殺され役" は始めてなのでは・・・との面白みもありました。
 執事役の橋爪功さんの殺された演技が見事でしたし、元・刑事役の國村隼さんの芝居はさすがと言える程はまっていました。
 先入観もあるのでしょうが、渡瀬恒彦さん演ずる元・判事は、動きが緩慢で、元気が無かった様に見えました(役どころもそういう設定でしたが)・・・体調は良くは無かったのだと想われます。

 これだけの達者な役者さんが揃うと、お互いに、特に若手はやりにくいでしょうネ
 そんな感じを受けました。

 これに引き続いて、NHKBSで昨年(2016年)11月27日、12月4日と11日の3回(凡そ45分×3回)に分けて放映された英国TVドラマ “そして誰もいなくなった” を見直しました。
 こちらは戦時下の英国で、やはり絶海の孤島が舞台。

 見直して気がついた事ですが、長坂/和泉版はこれを入念に研究していると感じました。
 ヒロインのイメージ、それに彼女が真夜中真っ暗の中をろうそくの灯りを頼りにホテル内を行き交う雰囲気等にそれを感じたのです。
 長坂/和泉版では、仲間由紀恵さんをヒロイン役に迎える以外のキャスティングは無かったのでは?・・・
 むしろ逆の発想で、英国TV版を早い段階で観た時に、ヒロインから仲間由紀恵さんを主役とした日本版が考えられたのでは・・・と想わずにはいられません。

 更にこれに引き続いて、1974年公開の "そして誰もいなくなった"(O.リード及びR.アッテンボロー:ヒロイン=エルケ・ソマー)を観ました。
 こちらは、時代は現代ですが、舞台は絶海の孤島とは反対に砂漠の中で孤立したホテルになっています(冒頭の場面:ホテルへの移動はヘリ)。
 話の大筋は原作に沿っているのですが、最後は10人全員がいなくなる訳ではないのがミソ。
 この映画を初めて観た時、10名の役どころをよく理解出来ずにいましたが、今改めて見比べると、長坂/和泉版は原作をよくこなしていると感じました。

 WikiPedia によれば、TVドラマや映画が他にもいくつか制作されているようでしたが、おしなべて評判は今一のようでした。


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