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20170622:“HITAC5020” 時代から今を観て・・・ [電脳サイエンス考]

 日立製作所が大型汎用コンピューター、いわゆるメイン・フレームのハードウェア開発を取りやめ、IBM社製マシンに自身のOSを搭載して事業継続を計るそうだ(出所:日経紙2017年5月24日)。

 メイン・フレームは超大量のデーター処理が出来る "最も信頼できるコンピューター" として、官公庁や大手企業の基幹システムに採用されており、国内では富士通が凡そ1/3、次いでIBM社が1/4、NECが1/5を占め、今や日立は後塵を拝して1/6強に留まっている様だ。

 コンピューターが高機能化の一方、小型化され、ネットで繋がり、クラウド運用が普及した結果、メイン・フレームの市場規模が国内外で縮小している事への対応との事でした。

 冒頭の報道を知って想い出したのですが、自分が始めてコンピューターを使い始めたのが名機と言われた "HITAC5020" ( ”ハイタック・ゴー・マル・ニイ・マル” )で、日立が科学技術計算等を念頭に開発・製作し、東大(@文京区本郷)の大型計算機センターに1966年前後に採用された初代機で、国内では京大、NTT(当時は電電公社)に次いでの導入だった(IBM社製にするか、国産機にするか、激しい競争があったとの事は後で知りました)。

 このセンターは全国大学共同利用施設となっていて、国公私立の区別なく理工系大学生等はそこで使用言語(フォートラン)を習い、自らプログラミングして技術計算をしていた。

 当時は一枚のカードに一行分の命令文を打ち込む方式で、そのパンチング・マシンも空くのを待っての作業だった。
 規模の大きい計算では千枚を軽く超えるパンチカードを専用の段ボール箱に納めてセンターへ預け、数日後に訪れてカードと共に計算結果を打ち出したB4版前後の紙面の束を受け取る。

 プログラムミス( "バグ" と言ってました)があると、その旨を伝える数行のコメントが打ち出された紙一枚!で終わり。
 これを数回繰り返してプログラムを完成させ、ケース・スタディを積み重ねる。
 "先端の取り組み" をしている割には、その作業はバッチ式で、効率は低く、今の様に居ながらにしてモニターを眺めてオンタイムで作業するスタイルは大分後になってからです。

 その日立がメイン・フレーム自体の開発から撤退すると言う。
 今や科学技術計算はスパコンを手軽に利用出来る時代だし、技術計算プログラムも数多く開発・公開され、共同利用される様になり、シミュレーション環境は格段に整備されている(*)。
 (*)ご参考:
   “20161205:”国内最速スパコン稼働へ” の記事を読んで・・・“

 ハードウェアとソフトウェアに恵まれた環境下では、シミュレーションのベースとなる "計算モデル" の良し悪しが結果の質を決める。

 と言うのも、経験から申し上げますが、全く同じソフトウェアを使っても計算モデルの立て方で結果は大きく異なるのが普通だからです(:計算モデルを組み立てる研究者に何が必要なのか、機会を改めてブログ致します。経験論に過ぎませんが・・・)。

 大量のデーターベースを背景に、機能性材料の計算設計の可能性も高まり、素材メーカーの取り組みも本気モードらしい。

 競争相手は米国に限らない。
 今では中国や韓国も手ごわい実力を持ってきており、日本勢の成果を期待するばかりだ。
 決して負けてはならない! 若手研究者諸君!!
 "モノ造り日本" で居続けられるかどうかは、貴方達次第だ。

追記:
 中国も韓国も “オープン・イノベーション” が進み、米国や欧州大学等の研究開発機関との連携でコンピューター利用技術の完成度を高める事に余念がないと言われている。

 何でも “自前主義” がお家芸だったわが国の製造業も国際協業へ進まざるを得ない程、技術革新の速度は速い。
 経営陣の誤りのない判断を祈りたい。
 東芝の様な大企業でさえ経営判断の誤りは企業自体の存続を揺るがしている。
 背景には3.11以降の原発事業の位置づけに関して、GE(ゼネラル・エレクトリック@米)とシーメンス@独は縮小・撤退の方向へ、東芝は中核事業に固持した事が指摘されている(:出所:日経紙2017年5月5日付)。
 今では東芝と海外勢との差異は絶望的な程にも広がってしまっている。
   ご参考:”20170330:原発の行方”

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