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20180831:ついに実用化へ? 大気中炭酸ガスから燃料製造 [雑感]

 TVとか一般雑誌ではあまり話題になっていない様なのですが、”本当なら凄い” 技術が開発され、実用化に向けた動きが始まろうとしています。

 ハーバード大学研究者等が設立したベンチャー “カーボン・エンジニアリング”(@ブリティッシュ・コロンビア州@カナダ・・・以下、勝手に “CE社” )が大気中の炭酸ガス(CO2)を “低コスト” で分離する技術開発に目処をつけたと言う(日経紙:2018年7月22日朝刊サイエンス面)。

 大凡のスキームは、
  大気の吸収(並列換気扇で吸い込み) ⇒ アルカリ水溶液中へ
   ⇒ 炭酸カルシウム(CaCO3)として回収
   ⇒ 加熱・分解させてCO2を回収・・・①
   ⇒ 触媒反応でアルコール等燃料化・・・②

 ①迄の製造コストが大凡 ¥10k/CO2-ton 前後と見積もられているそうだ。 特別な化学反応が起こっているとは言えず、コストの上では分離スキームがポイントの筈・・・とすれば “フィルター” 設計技術が重要なのだろうと想われます。

 ②の実用化は世界中の大学や素材企業が触媒開発を中心に手がけており、工業化の可能性も高いとされる。
 最も卑近な事例としては、還元して一酸化炭素(CO)とし、水の電気分解から得た水素と組み合わせれば多種多様な化学物質の合成が可能だ。 同種技術は既に第二次世界大戦時代から実用化されている化学反応で、当時のドイツでは石炭由来のCO/Hから燃料製造にこぎ着けていたとも言われている(但し、COはいわば “石炭の蒸し焼き” で発生させる)。 通説では、南アフリカでもアパルトヘイト政策の為に石油の輸入が十分でない時代、同様スキームで燃料製造していたと聴いた事があり、石炭由来COは極めて有用な工業的化学原料ともされている。

 我が国では1980年代から90年代にかけて通商産業省(当時;現・経済産業省)が主導したナショナル・プロジェクト “C1化学” がこの系譜をより進化・深化させた現代版とも言える取り組みだった(成果報告書の段階では “基盤技術の開発に成功” となっている筈です)。

 温室効果ガスとしてのCO2を処理処分する技術としては地中大深度に埋めてしまう手法等も開発検討されているが、大気中CO2を化学原料として使いこなす方が遙かにスマートだ。
 CE社では 1 CO2-ton/年スケール規模の実証試験規模をスケールアップして実用化に向けて取り組むと言う。 成功を期待せずにはいられない。

 が、この種の技術は、本来、我が国の技術屋さんが得意とする分離技術の範疇の筈なのだが、先鞭をつける事が出来なかった様で、少しだけ残念。

 ***に巨大な研究費を注ぎ込む事も “科学(ひいては人類)への貢献” と言う意味では尊い取り組みだが、限られた予算をこう言う方面へも配分してネっと!
 (***:皆様、勝手にご推察下さい m(_ _)m )

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