SSブログ

20180708:民間ロケットは何故難しい? [ただの私見]

 小型ロケット開発ベンチャー(:最近は "スタートアップ企業" と呼ばれる)である “インターステラテクノロジズ社”(以後、勝手に "IST社" と略記。大樹町@北海道)による観測ロケット "MOMO2号機"(10m*1トン。目標高度≒100km)の打ち上げは1号機(2017年7月)に引き続いて失敗に終わった(6月30日各紙夕刊)。

 1号機では高度20kmに到達したものの機体破損、今度の2号機では4月に発射直前の設計ミス発見で延期され、今回の満を持しての発射であったが、20m程上昇後にエンジン・トラブルで推力ゼロとなり、墜落・炎上となった。

 残念だ。
 今は大昔、ソ連(当時)の人工衛星打ち上げ成功に後れを取った米国が準備もままならずに何回もロケット打ち上げに失敗し、しかもそれが公開されてTVニュースで報道されていた事が想い出される。 両国のロケット技術がナチスドイツのそれを戦果として引き継がれたものから発展していった事はよく知られているところだが、その軍事力としての評価と高度化に向けた力の入れ方が両国で違っていたと解されている。

 エンジンを噴かして機体を宇宙とされる領域に飛ばすには宇宙航空工学・機械工学・制御工学・材料工学等の結集と知見・ノウハウの積み重ねが必要だ。 それには失敗の繰り返しを可能とする莫大な費用と、その経験をノウハウとして蓄積た上で活かす豊富な人材が前提であって、小型だからと言って簡略化される訳ではない。

 我が国初の民間ロケット開発を目指している技術者僅か20名程の IST社の技術水準がどの程度なのかは知る由もないが、国が威信をかけてJAXA(宇宙航空研究開発機構)へ税金を投入して得ているそれとは段違いだろう位は容易に推測される。 ロケット技術はすぐさま軍事技術に結びつく要素が高い事から、あらゆる部材・部品・詳細設計・制御技術等が機密化されていて、関係した当該組織だけの蓄積&保有技術だ。

 それ故に、民間がゼロからスタートするには余りに高い障壁が待ち構えていると想われる。 そのせいかどうか、同じく小型ロケットの開発を進めている “スペースワン社” は、{ ”キヤノン電子” + “IHI エアロ” + “清水建設” + “日本政策投資銀行” } が設立参加していて、資本金は14億円。 JAXAの小型ロケット開発に参画し、航空技術やエンジン開発の技術蓄積を備え、数年先の打ち上げを狙っているそうだ。

 IST社社長は 「ロケット科学には失敗がつきもの。次は失敗しません」 とのコメントが伝えられている。
 失敗がつきもの・・・これは歴史が教えている通りだが、原因の特定が定まらないのに何故次は失敗しないのか・・・HAL9000(*1) だったらすぐさまその “論理のあやふやさ” を指摘する筈だ。 同社創業に携わった堀江貴文氏は 「先が見えない」 と語ったそうだが、誠に正直なコメントだと想う。 氏は何百億かそれ以上の資産持ちかもしれないが、数十億で済む話とは想えない。
 彼の一ファンとして無駄な投資に終わらない様に切に望む者ではあります。
-----
(*1):映画 "2001年宇宙の旅" で木星へ向かった宇宙船ディスカバリー号に搭載された今で言うところの "AI-コンピュータ"。 "HAL" とは "IBM" の"先を行く" 意味を込めてのネーミングとされている(アルファベット順で、"I" の前が "H"、以下同じ)。