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20230729:森村誠一さん逝く(作家) [故人を悼む]

 7月24日に逝去。 享年90歳。

 デビュー時期、斬新なトリックを編み出したミステリー:
   高層の死角(1969年)・・・江戸川乱歩賞
   新幹線殺人事件(1970年)

は旧来の "名(or迷)探偵もの" とは違う、そして "社会派" とも違うもので、些かこれ等に飽きが来ていたところもあって大評判だった。
 交換殺人とか、連続殺人事件複数犯人等々、それ迄の "禁じ手" とされたトリック物も見事に昇華させた作品も多い。
 人間の業を絡ませた "証明" シリーズ( "人間の証明" & "野性の証明" )と "悪魔の飽食" は代表作とも評されている。

 又、先輩作家への敬意もしっかりしていて、故・松本清張氏に対しては
   この方が英仏語圏の方であったらバルザックと同等の評価を勝ち得ていた筈だ

と指摘されていた(もう忘れたが、NHK総合TVの何とか番組でのインタビューに答えていたものだった)。

 "人間の証明" で登場した棟居刑事@警視庁は、以後シリーズ物になった上、TVドラマ化もされた(老生としては中村雅俊さん主役シリーズがお勧めだが・・・)。
 牛尾刑事@西新宿署シリーズは永きに渡ってTVドラマ化され、昨年12月に終止符を打ったばかりだが、これはネタ切れと言うよりも、主役の相方を演じた女優のコロナ禍による彼岸への旅立ちの方が背景にあったのだろう。 片岡鶴太郎さん主役シリーズだったが、初期の頃はトリック崩しが面白かったものの、後期は原作からの飛躍&違和感を感じていたものです。

 故人の晩年に向けての創作活動はミステリーの世界とは幾ばくかの乖離が観られたが、本来の社会派の立場からの主張が多かった様に想う。
 加えて、故人の公式ウェブサイトには "ネコ特集" が組まれていて、多種多様なニャン等が愛情を持って写真に撮られているのを観るのが楽しみだったが、最近は更新が無かった様だった。
 ミステリー界に於いて新しい分野を切り開いた作品を多数読ませて戴いた感謝の他は無い。
 黙祷。

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