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20240302:"砂の器" と "木次線" [ミステリ三昧]

 このタイトルで直ぐさま
  ① 砂の器:松本清張’長編推理小説
  ② 木次線:JR西日本が運行する地方鉄道であって、
    - 宍道駅@島根県松江市 ⇔ 備後落合駅@広島県庄原市
     の間で島根県⇔広島県を結ぶ唯一の鉄道であり、
    - "きすきせん" と読み下し、
    - その途中駅に "亀嵩"(かめだけ)駅がある事

を想い起こす方がどれ程の数おられるか老生には解る筈も無いが、昨年12月に下記書籍が発刊された:
   村田英治著:「砂の器」と木次線(ハーベスト出版)・・・①

 故・松本清張及びその膨大な著作は、好き嫌いはあろうが一定の年齢以上の方々には今も大きな関心を持たれている希有な存在だ。
 でもって、洋の東西を問わずのミステリ好きにとって、このタイトルを観ては見逃す訳にはいかない。

 著者は、元NHKプロデューサー(1988~2022年)にして、あの "ドキュメンタリー番組:プロジェクトX" に関わったそうだ。

ところで:
 "砂の器" では、"亀嵩"(かめだけ)地区@島根県奥出雲町が物語の肝となる所として登場する。
 "国電" 蒲田操車場(1960年代当時)で発生した殺人事件捜査担当となった老練&若手の刑事二人が僅かな手がかり:
   被害者の "東北弁" なまり & "カメダ" という言葉

から犯人を追う話。
 "東北弁" と亀嵩地域の "出雲弁" が聴きようによってはよく似ている事から、"カメダ" が当初の推測であった人名では無くて地名 "カメダケ" と突き止め、そこでの調査からやがて被害者と犯人の繋がりが紐解かれていく筋書きだ。
 所謂 "社会派" 編で、トリック自体に新味がある訳では無い。 著者が重視していた犯因(犯行動機原因)が当時はタブー視されていた事と関連していたのだが、ここでは省略デス。

 1974年に映画化された際には木次線沿線各地でロケが行われ、当時小学生だった①の著者は撮影現場に遭遇していたそうだ。 そんな事からか、定年退職後に "亀嵩" が選ばれた背景を調べ、本としてまとめ上げたとの事だ。

 老生は、おふくろ様が鳥取出身のせいで山陰地域に限りない関心と愛着があって、その地域の人と風土が好ましく、著者の気持ちとか心意気が何となく解る。
 贔屓目かもだが、力作・・・と言って良いと老生は想いました。

ついでに:
 砂の器の映画化は1974年限りだったが、TVドラマとしては
   TBS2回+フジTV3回+TV朝日2回

の都合7回放送されている(← Wikipediaで確認)。

 老生の好みでは
   映画版:主演=丹波哲郎・森田健作・加藤剛

   フジTV’1977版:仲代達矢・山本亘・田村正和

が、今流行の言葉で言えば "推し" か(役どころ:老練刑事・若手刑事・犯人)。
 勿論、映画&TVドラマでは原作には無いサイドストーリーが含まれているが、犯人&犯因が乖離している訳では無い。

ところで・・・:
 記憶違いかもだが、映画&TVドラマ版では亀嵩駅が描かれるものの、実際にはこの駅舎ではなく、近接する駅のだったかと・・・絵面(えずら)で亀嵩駅は変えられちゃったとの覚えがあります。

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20230523:神の手・・・って言えば(三題噺) [ミステリ三昧]

 サッカー、医療、そしてミステリですねぇ。

1.サッカー:
 W杯1986メキシコ大会での準々決勝戦:イングランドvs.アルゼンチンで見せた故・マラドーナ選手の "神の手ゴール" が余りに有名だ。
 今のFIFA’W杯では電子判定が進んで "神の手" が何だったのか、きわどいにしても特定されたのではなかろうか・・・な?

2.医療:
 脳外科とか心臓外科の分野では神の手の持ち主と言われる程の極端に高度な外科技術を身につけたお医者様がおられる事が知られている。
 自分の知人の奥様が難しい脳外科手術を受けて今では平常に近い日常生活を送っている例を知っているので、余計にこの感を強く持っている。

3.ミステリ:
 偶然にもこれを題目とする上出来ミステリが我が国で発表されている:
   望月涼子:神の手(2004年4月21日・集英社刊)・・・①
   久坂部洋:神の手(2012年5月11日・幻冬舎刊)・・・②

 これも偶然だが、①はつい最近にテレ東で、②は2019年にWOWOWでドラマ化されている。

 ①は女流作家の文芸受賞作品の盗作に端を発した作品、②は安楽死を題材としながらも医療世界のドロ*2を描いた作品だ。

 女流作家の作品盗作ミステリは松本清張’ "蒼い描点"(1959年・光文社刊)でもあったが、さすがに半世紀後の①では複層とした事件を平行して絡ませる場面等で視点が斬新との印象だ。 ここでの神の手とは、作家として斬新な作品を次ぎ*2と間断無く産み出し、原稿を埋めていく手を意味している様だ。

 ②の作者は、最近になって同じ出版社から "寿命が尽きる2年前" ・・・って言う、何とまぁ衝撃的な題目の書籍を著している方だ。
 そんな著者だからこそ、人の生と死を、特に死を定めるのは神のみとしているのか。 安楽死問題は彼岸への旅立ちがそう遠くない自分等の年代層にはチコッと身近すぎる課題で、読み通すのは気が重いところがありますなぁ。
 だからTVドラマも①の方がお気楽に観る事が出来ます。

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20230307:何故に今頃 ”新訳本” が?(一世紀近く前のミステリ) [ミステリ三昧]

 我が国のでは "源氏物語" とか、海外物では "イーリアス/オデッセイ" とか、この種の古典モノは "新訳" と言うか、"現代語訳+新解釈" 版が出版されると大変有り難い・・・と想うのが老生だけではあるまい。

それが・・・:
 最近は1930年代以降に大ヒットして我が国ではミステリの古典と位置づけられて久しいE.クイーンものの新訳版がいくつも出版されていて、それなりに評判(?)になっている・・・って "風の便り" に聴いた。
 それとなく入手して改めて読んでみると、
   -中学生時代に夢中になって読みふけっていた事

を今更ながら想い出し、犯人を覚えている事件では
   -こんな所に布石が・・・

って気がつくのも面白い。

が、一番有り難いのは
   -フォント・サイズが大きくなっている

事だ(新訳者のご苦労を差し置いて申し訳無いデス)。
 大昔のポケミスなんぞを引っ張り出してみると、そのフォント・サイズの何とまぁ小さい事と言ったら・・・最早読めない。
 成る程、今は昔、読んだ年代層を狙った新訳版なのか・・・って気がついた。

因みに:
 老生は寝っころながら読むので電子版読書は好みませんのデス。

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20230105:難問(好評シリーズ最終話) [ミステリ三昧]

 小説やドラマで人気を保ちつつシリーズ化されていても、いつかは "時代の流れ" って言う正体不明の奴に抗えずに置き去られる形で最終話となると、"その閉じ方" は原作者にしても脚本家にとっても難問に違い無い。

 そんな例を二つ。
 昨年末、永きにわたったTVミステリ・シリーズが最終話を迎えていた:
   牛尾刑事’終着駅シリーズ・・・①
   十津川警部’トラベル・ミステリー・シリーズ・・・②

 どちらもTV朝日版だが、その最終話はチコッと戴けない閉じ方だった・・・まぁ、意固地な後期高齢者の超個人的な感想に過ぎないけどサ。

①は:
 新宿西警察署を舞台とした森村誠一氏原作ものだが、必ずしも牛尾刑事が登場しない短編であってもTV版では脚本でシリーズものに仕上げている。 主役も複数の役者さんが演じてきているが、片岡鶴太郎氏ものが最終話を閉じた(自分は初代を演じた露口茂氏版が好みだったが・・・)。
 初期のドラマでは原作にほぼ忠実で、謎解き/トリック明かしが見物だったが、シリーズを重ね、主役が代替わりしながら年季が経つにつれて "人生深掘り感" が出てきて、ミステリー・ドラマにそれを求めない自分なんかは鼻白んでしまっていた。
 最終話では "愛と死" を深追い過ぎて面白みに欠けた・・・申し訳無いが、個人的にはそういう印象だった。 主役相方だった奥様役の岡江久美子さんが実社会でコロナ禍で旅立ったこともあっての事だろうが・・・不謹慎な言い方を許して戴ければなのだが、どうせ主役級の死を扱うのであれば "主任警部モース" シリーズ最終話の様なあり方で欲しかった・・・と想うのは自分だけかもしれない。

②は:
 鉄道ミステリ-の筆頭旗振り役であった故・西村京太郎氏の余りにも知られたシリーズで、これも複数の役者さんが十津川警部を演じている。
 TV朝日版は初代は故・三橋達也氏が、次いで高橋英樹さんが演じて今回の最終話となった。 TBS版では故・渡部恒彦氏が主役を演じていた・・・どちらも原作イメージとは違うが、高橋英樹氏版最終話ともなると原作との乖離が大きく、謎解きの面白さはどこに・・・って感じ受けているのです。
 まぁ、余りに長いとネタ切れ気味で、脚本担当がマンネリ化を嫌って "脱ミステリー" を意識し過ぎるせいかもしれない。

 同じミステリーもののTVドラマであっても、どうして "主任警部モース" とか、"ルイス警部" の様な人間関係を背景とした複雑な "謎解き" が我が国では長続きしないのか・・・考察すべき課題なのかもなぁ。
 "異論多数アリ" との我がワイフ殿コメントがありそうだけど・・・

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20221123:鉄道時刻表-復刻版 [ミステリ三昧]

 交通機関の運行時刻表・・・今ではスマホやPCで行き先を時刻込みで指定すれば、乗り換えを含めて最速/最安ルートまで即座に案内してくれるアプリが普及していて、使う人は激減している筈だ。
 が、最近はJTB社から折々 "記念すべき月号の復刻版" が発刊されていて、多分、年配の "乗り鉄" 者中心だと想うが、それなりの人気が出ているそうだ:
    復刻時刻表-想像で旅する昔の日本
   (日経紙:2022年11月5日夕刊)

ところで・・・:
 時刻表・・・と言えばミステリー
 本場英国では超古典の "樽" で知られる故・F.W.クロフツは鉄道ミステリを得意としていた。 尤も、"樽" 以外は脚で捜査を繰り返す超地味な事件が多く、記憶違いで無ければ故・江戸川乱歩評に依ると "退屈" だ。 確かに "読み返す気" になれない。

 対して我が国では "黒いトランク" を代表作とした故・鮎川哲也氏がこの分野を超得意とした方だし、今は昔の東京駅で13番線ホームから通しで15番線オームを見通せる夕刻の僅か数分を利用した名作
   松本清張:点と線・・・①

が秀逸だ。 作中、時刻表はそこから "数字のある風景" が描き出されるとする犯人側の心理描写が並のミステリ-とは格の違いを見せていた。
 鉄道ミステリーと言えば、
   故・西村京太郎’十津川警部シリーズ・・・②

が知られているが、①の様な蠢く社会悪を背景としたモノでは無く、スピード感溢れる "路線操り型" トリックだ・・・と言うのが老生のとらえ方。 作者最後の、と言う事は十津川警部の最後の事件となるが、それはSL山口号を舞台とした編だった。
 また森村誠一氏の鉄道ミステリーはそれはもう複雑な絡みがあって、①とも②とも全く以て味わいが違う。

 こんな、とりとめの無い連想をしながら復刻時刻表で昔を想い出すのは、それなりの年齢を経た私等の "特権" かも。
 今は "黒電話" を知らないお若い方もいると言う時代だ。 時刻表雑誌なんぞ観た事も無い方は多いのでなかろうか。 そんな時代なんだ。

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20220927:”メタノール” 殺人事件 [ミステリ三昧]

 被害に遭われた方とご遺族から観れば不謹慎・不愉快そのもののブログになってしまいそうですが・・・古今東西の数あるミステリの中で、ありそうで見つからない "メタノール殺人事件"。
 それと疑われる殺人事件が現実に起こったそうで、もうびっくり。

メタノール:
 最も簡単な化学式で示されるアルコールで、メタノールとは "メチル・アルコール":
   化学式:CH4O
   示性式:CH3OH (:MeOHと略記する場合もある)

で示される無色液体だ。
 昔ながらの化学実験室であれば必ずあった "アルコール・ランプ" は、燃料にこのメタノール、若しくはこれとエタノール:
   エチル・アルコール
   その化学式:C2H6O
   その示性式:C2H5OH (:EtOHと略記する場合も)

との混合液が使われている。

エタノールは:
 糖からの発酵品はお酒とかワインを初めとする所謂アルコール飲料向けや食材食品への添加等に、エチレンの水和反応からの化学合成品は種々の化学品/化成品等の原料の一部として使用される基幹物質だ。
 現下のコロナ禍で使用が推奨されている消毒用アルコールは、エタノールを適宜水希釈して商品仕立てしたものに他ならない。
 またここ10年程前からサトウキビ由来のエタノールを加水分解させてエチレンへ変換し、これを原料としたポリエチレンが植物由来ポリエチレンで、最近はレジ袋等の包装用途としての需要が高まっているらしい。

それに対してメタノールは:
 今は昔、
   "目散る" アルコール

とも言われていて、誤飲すれば "失明" に至る恐れが多分にあるとして、その保管/使用/管理が法的にも指定されている毒物/劇物であり、一般家庭におけるありふれた日常生活場面での使用は先ずは考えられない。

 このメタノールを飲料等に混ぜて飲ませる・・・ヒトの口からの最小致死量はおよそ
   0.3~1.0gr/kg-体重

とされる(ネット調べ)ので、泥酔状態とかで、或いはキツいアルコール飲料等に混ぜられて気づかずに飲まされてしまう・・・その結果として "死" に至る可能性だって十二分にあり得る危険な物質だ。

 老生の知る限りにおいて、古今東西ミステリの小説/映画/TVドラマでは、テロリストとか不良共が火炎瓶の違法作成で時たま登場するに過ぎない。
 これが使用された殺人事件が現実に起こったとすれば驚きだ。 被害に遭われたお方のご冥福を祈るしか無いが、薬品類に素人の犯罪とは到底想えない。

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20220807:学校経営トップを巡る争い(東西ミステリ比較) [ミステリ三昧]

 この3月に放映されていた
   松本清張:"混成の森"
    - 信濃毎日新聞等夕刊連載小説
     (1967年8月25日-1968年9月2日 ← ネット調べ)

が、この暑い最中の7月下旬にNHKBSで再放されていた(W主演:沢村一樹氏&船越英一郎氏)。
 後継理事長/学長を巡る主導権争いで、最後に所謂 "どんでん返し" があって、勝者不在に終わる社会派ミステリっぽいお話だ。

 似た様な・・・とは言えないが、オックスフォード大学カレッジ学寮長の後継争いを巡る殺人事件を扱うよく知られたミステリがある:
   C.デクスター
    主任警部モース第13話:"死は我が隣人"
    (原作:1996年/邦訳初版:1998年)

 こちらもJ.ソー主演TVドラマがあって、最後に捻った結果になるのだが、モース本人が悪辣な仕掛け人にキツいお灸を据えるのが気が利いている。

 学校運営側トップの軋轢を扱いながら、落としどころが何となく似ているのは現実を反映しているのかも(?)・・・と想いたくなってしまう所なんざ、ミステリそのものかも。

 ミステリとか、それっぽいお話では、犯人とか結末を明示的にしてはいけない不文律みたいなものを感じているので、何が何だかボケーっとしたブログになりました・・・m(_ _)m

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20220104:集中っ!モース&ルイス(大晦日+三が日) [ミステリ三昧]

 大晦日~三が日にかけては、あの "格付け" & "大学ラグビー選手権準決勝戦" のTV観戦以外は何かテーマを決めて集中する事がままある。
 今回はBS11が土日08:00~1時間枠で "ルイス警部" シリーズを放映していることで久しぶりに
   主任警部モース・・・①

   ルイス警部・・・②
を一挙に見通す事とした。

 ①は、故・C.デクスター原作のS.ホームズを抜いて人気のあるミステリ・シリーズ。
 何とその最終回では、原作者が旅立った上に主人公を演じてきた役者さんが体調不良も相まってモース自身が病死する・・・って言うとんでもないシナリオだったが、人気に目を付けてのシリーズが彼の若かりし時代の活躍を描いた
  原題:エンデバー
  BSタイトル:刑事モース-オックスフォード事件簿
になった訳だ。
 が、これは今回は除いておいた。

 ②は、①の言わば "オマージュ" 編で、主任警部モースの部下が主人公として復活して多様な事件の犯人捜しに奔走する。
 元の上司と違ってルイス警部は非直感型でよく歩く。
 その彼の部下がケンブリッジのどこかのカレッジ出身で、博学なのだが、どういう訳か出世コースからは外れている設定が意味深だ。
 ①と②共に訪れた事の無いオックスフォードを舞台としているので、各カレッジ関係者を巡る中で歴史プン*2の建物を観るのも楽しい。

 邦モノでも横浜とか山梨とか、それに信濃、金沢や札幌、更に京都等々、東京以外を基地としたシリーズがあるけど、横浜と山梨を舞台とした横山秀夫原作’警察シリーズのを除くとチコッと味わいが違う。
 主人公にはそれなりの役者さんが取り組んでいるのだが・・・話の中身、特に人間関係の濃密さが違うんだろうなぁ。
 年末年始はモース主任警部&ルイス警部の活躍を堪能しました。
 やはりミステリーものは海外物では英国版が安心して観ていられる・・・のはどういう訳か。
 これもミステリーかも・・・
 ただ一つ、クルマが道路左側通行で、かつ登場するクルマ自体が右ハンドル・・・ってのが後期高齢ドライバーから観てシームレスに画面に入り込めるのです。

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20210625:”蒼ざめた礼服” ? [ミステリ三昧]

 このタイトルだけで "清張のあれか?" ・・・って想いつくお方は相当の(お歳を召された)ファンに違い無い。

 我が国の防衛に関わる件で、自民党国防部会等が
   新型イージス艦レーダーについては、
   政府方針( "ロッキード・マーチン社@USA採用" 案 )を
   了承

との小さな*2記事が眼についた(日経紙:6月19日付け朝刊総合3紙面)。
 自分にはこの方針の善し悪しは判断出来ないが、国防にしろ防諜にしろ、最近は何かと "胡散臭い" 事件が報道されている。
 例えば、我が国の民間人を使って米国の軍事情報文献を収集させた疑惑で出頭要請されたロシア通商代表部職員が無断出国してしまう等々、まるでエスピオナージュ小説を彷彿させる。

 冒頭の様な軍艦整備に関しての記事なんぞを読むと、ロートル世代である自分には、今では恐らくは誰も(?)顧みないであろうところの
   "蒼ざめた礼服"(松本清張作:1960年代央)

を直ぐに想い起こしてしまう。
 当時の最新潜水艦導入を巡って米国2社のどちらを選ぶか、由緒正しいとされる有識者が関わる "奇っ怪" なお話で、"起承転" 迄は結構読ませたんだが、"結" が急転直下過ぎる感だけが残った。 この有識者と称される人物が "くせ者" で、最新軍事技術情報満載の洋書や雑誌・文献類を誰よりも早く取り寄せて知識を溜め込んでいたに過ぎないのだが、清張ファンには上々の評判が多かったです。
 半世紀以上も前・・・今は大昔の事で、情報時代の現代ではさすがに通用し難い筋だと想うけど、ロシア通商代表職員の件もあるし・・・
 清張氏が生きておられたら、どんな筋書きにしたか、チコッと興味はありますなぁ・・・

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20210110:”本物” の二重スパイ モスクワに死す [ミステリ三昧]

 12月27日付け外電(タス通信@ロシア)によれば、英国スパイとして活動していながら、その実、旧ソビエト連邦(実質、現ロシア)に機密情報を提供していた二重スパイ:J.ブレイク氏が26日にモスクワにて死去したと伝えていた。 享年98歳。

 波瀾万丈の生涯だったらしく、同記事によれば、
  ① 英国外交官として韓国駐在時に朝鮮戦争勃発
  ② 北朝鮮がソウル市占拠時に拘束され
  ③ その間に共産主義者に転向
  ④ 終戦後に解放され、英国本国へ帰還し、情報部門で活動
  ⑤ 二重スパイとして機密情報をソビエト情報機関へ流す。
  ⑥ その機密情報事例として
   - 英国/米国が共同で掘ったソビエト通信盗聴用ベルリン地下トンネルの存在
   - 東欧で活動する英国スパイ情報
   等があったらしい。
  ⑦ 1961年に二重スパイが発覚し逮捕され、禁錮42年の判決
  ⑧ が、刑務所から "脱獄" ⇒ ソビエトへ亡命し、モスクワ在住
でもって、
  ⑨ ソビエト時代はおろか、現ロシアでも "英雄視" されていたそうで、
プーチン大統領が追悼文を贈ったそうだ。

 ベルリン市内には秘密の地下トンネルが結構ある・・・とは、東西冷戦時代のスパイ物の定番だったが、本当の話だったんだ。
 こりゃぁ、まるでつい先日無くなったジョン・ル・カレ氏の世界(*1) そのものかも知れんぞ。
 代表作ともされる "寒い国から・・・" では正に二重スパイの正体や如何に・・・が本筋だったしなぁ。

 我が国はスパイ天国とも言われている・・・と何かの記事で読んだ記憶があるが、正に "事実は小説より奇なり" なのかも・・・世界は凄いね。
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(*1)20201223:ジョン・ル・カレ氏 逝く(エスピオナージュもの)

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20200101:捕物帖に出会う [ミステリ三昧]

 新年明けましておめでとうご御座います。
 
 丁度一年前、”修道院ミステリ” をブログ投稿しました(*1) が、今年は一転、”捕物帖” です。

 捕物帖は広い意味で推理モノとされますが、本格モノのような厳密な論理構成は無いに等しい。
 専ら “江戸時代”、それも “お江戸八百八町” を舞台とした単純な事件を市井風景を巧みに織り交ぜた “お気楽” な “娯楽小説” と言った方が的を得ている・・・と自分は考えている。
 勿論、現役作家による捕物モノもあるが、自分好みはあまり・・・
 今は昔になっちゃうが、既に物故された方々の殆どの捕物帖シリーズを読み込んでいたが、その多くが今では絶版だ。

が:
 今の世の中、”オンデマンド” 出版システムがあって、一冊でも製本版がネットで手に入る。
 何でも書籍を探し出し、高精度PDF化⇒ディジタル変換し、手を加えて原本を忠実に再現するのだという。
 その分、お高いが、懐かしい物語に書籍として再見できる楽しみが最高だ。

 今、嵌まっているのは
  城 昌幸:若さま侍捕物帖

だ。
 中身は単純明快で、筋らしい筋もあったモンじゃ無いが、寝る前のほんの10分もかからないで一編を読み終える短編集が多い。
 今は昔、日本映画、それも時代劇全盛時代、故・大川橋蔵主演シリーズものが流行ったし、フジTVがドラマ化した事もあった(東山紀之主演)。

 社会派推理モノの様な複雑な人間関係を背景とした筋はそれはそれで面白いが、せめて暮れから正月にかけてくらい、単純なお話に接したい。
 そんな訳で今夜はあの “格付けチェック” を見終えたら捕物帖の世界へ入ります。
 こんな時の寝酒は “(日本酒)古酒” に限りますなぁ・・・

末筆ですが:
 本年も “どうでもいい” ブログにお立ち寄り戴き有り難う御座いました。
 相変わらず “どうでもいい” ブログしか投稿出来ませんが、お時間あればご訪問下さいます様よろしくお願い申しあげます。
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(*1)20190101:”ブラザー・カドフェル” に出会う


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20190924:”真犯人” は ”別” の筈だが・・・(”黒井戸殺し”-三谷版 ”アクロイド殺し”) [ミステリ三昧]

 三谷幸喜さんは、脚本家として類い希な才能の持ち主・・・と同時に、役者としても “怪演” が素晴らしい。

 最近の映画 ”記憶にございません” の公開に合わせるかの様にフジTVでは昔の古畑シリーズとか映画を集中的に放映している。

 と想っていたら、14日には “黒井戸殺し” を再放していた(初出:4月14日)。
 余りにも有名なA.クリスティ:”アクロイド殺し”(発表年:1926年・・・何とっ!90年以上も前の事だ) の “J-版” だ。

 クリスティのJ-版はTV朝日でも第一作:“そして誰も・・・”(*1:これは良かった)以降計4編が放映されているが、第二作以降は折角の原作置き換えシナリオ(含・役者陣)がちょっと・・・出来映えが残念。

 超有名な作品ばかりなのでファンなら誰でもトリックを知っている事から “脚本の質” 次第で面白みが決まる。
 とすれば自分の印象では三谷版の方(第一作:”オリエント急行殺人事件”(確か2015年)&第二作:”黒・・・”)が遙かに優れていた感じだ。

さて:
 原作 “アクロイド殺し” では余り評判の良くない “仕掛け” が成されていて、当時は “フェア” か “アンフェア” かの議論が沸騰したらしい(これをなぞった “亜流版” が国内外多数ある)。
 我が国でも評論家として頂点を成した故・小林秀雄氏が “騙された” 悔しさからだろう、“あれはインチキ” と一刀両断していた程だ。

が:
 原作でH.ポワロが指摘する犯人は “不自然” かつ “矛盾” があり、本当の犯人は “**” だとする精神分析学の第一人者にしてパリ第八大学教授の論考書が出版され邦訳されている:
  ピエール・バイヤール:”アクロイドを殺したのはだれか
    筑摩*房(初版:2001年9月15日・・・当方手持ち本)
    (訳者:大浦康介@京都大学助教授(当時))

 この書籍はフランス本国で1998年に発表され、すぐさま英訳され欧米では評判だったらしい(この論考の緻密さには恐れ入る)。
 A.クリスティ氏が既に彼岸へ旅立って(没年:1976年)から20年以上も経っていての著作だけに反論が聴けないのが残念と言えば残念。

 バイヤール論以降既に20年を越えているが、これを越える論考は誰からも発表されていないし、残念ながら我が国の推理小説評論家諸氏からのコメントは見聞きした事が “一切” 無い。

 “名探偵” ポワロ氏が如何に “自己陶酔” し、”妄想” に耽り、それ故にどういう手順で “ミスった” のか、本当の “真犯人は誰だったのか”・・・興味おありでしたら是非ともご参照下さい。

ついでに:
 “黒・・・” も三谷脚本では原作に忠実だったが、かっての “オリエント急行殺人事件” のJ-版の様に “2本立て” として、第二部では “バイヤール解釈編” があってもよかったのでは・・・と想う次第だ。
 三谷さんなら見事な仕上がりが期待出来そうなのだが・・・

因みに:
 “真の犯人” は、ポワロ氏が注意も関心も寄せなかった “文字通りに身近な” 人物で、黒・・・では超有名な**さんが演じていました(これじゃぁ解りませんが、まぁ、この程度でご勘弁を ・・・ m(_ _)m )。
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(*1):大分前のブログです:
  20170430:3本の ”そして誰もいなくなった”


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20190428:何故 ”関心” を持たれ続けるのか(故・松本清張氏) [ミステリ三昧]

 “生誕110年” を記念した催しが “神奈川近代文学館”@横浜市で開催されている:
   ”巨星・松本清張” 展(2019年3月16日~5月12日)

 直筆原稿(”或る「小倉日記」伝”、”点と線”)、創作ノート、眼鏡とかモンブ*ン製万年筆&インクポット等々の遺品群の展示に加えて講演会、朗読会、映画鑑賞会等も企画されていて好評だ(参照:日経紙2018年4月20日付け朝刊文化紙面)。

 彼の作品は社会派ミステリー、(古代史等を介した)歴史小説、時代もの、近代、特に昭和史等々の広い分野をカバーしていて、個人ではとても全てを読みこなせない。

 ミステリーものの多くは、映画化は勿論、NHK及び民間TVキー局の全てでドラマ化されているが、果たして今のお若い世代になじめているのだろうか。
 因みに我が家では過去の映画&TVドラマのほぼ全てをディスクに納めていて、その数は100本を優に超える。

 つい最近にも “平成最後の” とのキャッチコピーで放映されていたが、“砂の器” は繰り返し映画化されTVドラマ化されてきたものの、その都度に “変質”(←”劣化” とは言いません)して “オリジナル・コンセプトからの乖離” が大きくなり、初版本をオンタイムで読んだ経験者からすれば物足りず、納得感が無い。
 主役の刑事/犯人役で観れば、故・丹波哲郎/故・加藤剛が演じた初代映画版(松竹/橋本プロ;脚本:橋本忍/山田洋次;1974年)、それに仲代達矢/田村正和が演じたTVドラマ版(フジTV系;1977年)を超えるものは無い・・・とは自分なりの判定だ(敬称略)。  

 彼の作品に込められた底には “怒り” があった様に自分は感じ取る。
 人間社会にこびりついた理不尽への叫び・糾弾だったと想うが、今の社会に通じたモノを何となく嗅ぎつける人達がいる限りは令和の時代になっても感心を持たれ続けているのではなかろうか。

 40歳を超えてデビューを果たした彼に当時の文壇幹部連は冷淡で、あえて無視していた事をよく覚えているが、その彼等のほぼ全員が今では顧みられない存在になっているのは何とも皮肉な結果だ。

 昭和史発掘や戦後米軍占領下での未解決事件を独特の視点から眺めた “日本の黒い霧” 等は自分の好みからは離れているが、一方で初期の所謂社会派ミステリーものには斬新な “初出トリック” が創作されていて、中には未だに通用するのでは・・・と想うモノもある。

 そう言えば、いつだったか、NHKが回顧する番組の中で森村誠一氏が
   「彼が英語圏で生まれ育って創作活動していれば
   とてつもない評価を得ていた筈」
の様な事をコメントされていた。

 それを感じ取っているのか、最近は故・松本清張氏へ敬意を著す若手作家も輩出してきたそうだ(冒頭引用紙)。
 本物は時の流れがもたらす “色褪せ” を寄せ付けない・・・と言う事かも知れません。
 以上、現役時代を知る自分の “松本清張・考” であります。

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20190101:”ブラザー・カドフェル” に出会う(修道院ミステリ@中世英国) [ミステリ三昧]

 新年明けましておめでとうご御座います。
 本年もよろしくお願い申しあげます。

と言っても年末押し迫った折の行きつけ居酒屋さんで:
 最近こちらに越して来られた中年男性から
 「”修道士カドフェル” って知ってます?」
って訊かれた。

 自分:「E.ピーターズの? 確かもう亡くなっていたはずだが・・・」
 某男性:「そう。 さすがよくご存じ」
って “褒められ” た。

 11世紀、英国中西部のシュロップシャー州シュルーズベリ(って言っても行った事無いのでどういう所か知らない)にある大修道院を舞台に繰り広げられる一風変わった推理シリーズだ。
 主人公カドフェルは “十字軍” に参加した経験を持ち、その間に “薬草” についての知識を蓄え、修道院では医療にも勤める特異な地位を維持しており、しかも “人間観察” に長けている。

 確か20編ほどのお話があって、欧米熱烈ファンの “聖地巡り” が流行った事があったと聴いている。

 我が国では平安時代後期の大昔の頃のお話。 しかも修道院と言う世俗社会とは隔離された風変わりな生活環境下で実にいろいろな事件が起こる。
 中世の英国・・・見知らぬ世界の出来事と言う事もあって、集中して読み込んだ時期があったのです(四半世紀頃前の話です (>_<) )。
 “ベッド・ディテクティブ” ものとして最高傑作とも言える “時の娘” (ジョセフィン・テイ)(*1) を読んで英国の昔モノに興味を持ったのがきっかけでした。

 件の某男性に 「どうして?」 って訊いたら、「偶然手に入れて読んだら魅入られて・・・」 今、嵌まっているのだと言う。
 どうやらマスターから自分がミステリ好きな事、聴いたらしい。

 “昔、NHKでシリーズが放映されていましたよ” って言ったら、”DVD探す” って。
 そんでもって念の為ネットで調べてみたら "新品DVDは絶版" らしい。 残念でした。 言ったらがっかりするだろうなぁ。
 現役の勤め人なので今すぐって訳にはいかないだろうが、”一度現地で聖地巡りでも” ってお薦めしておこう。
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(*1):ブラザー・カドフェルが活躍した時代から300年程経った “薔薇(バラ)戦争” 時代に非道な王として知られるリチャード三世の “悪人伝説” の信憑性に疑問を感じた警部が “文献だけから” 推理する。 この警部は捜査中の不慮の事故から入院していて、部下にいろんな文献を持ってこさせて思いを巡らせる訳だ。 歴史ミステリ不朽の名作とされる(ハヤカワミステリ文庫’キャッチコピーから一部抜粋)。
 ついでながら我が国の同じような例では “高木彬光著:成吉思汗(ジンギスカン)の秘密” があって、”義経=成吉思汗” 説を “名” 探偵・神津恭介が推理するお話がありますが、これはちょっと・・・


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20181004:ありゃりゃっ? ”犯人3番目説” 崩れたかいな? [ミステリ三昧]

 先程、我がワイフ殿が録画ミステリーを見終わり、笑いながら 「あんたの言う “犯人3番目説(*1) は大外れ!”」。

 なんのこっちゃ・・・と聴いたら、一年ぶりの高橋英樹さん主演 “十津川警部” ものの最新作で番組表で記載されていた “出演者リスト3番目の俳優さんが犯人役ではなかった” と言う。

 先月16日(日)にTV朝日系で放送された “西京トラミス69:金沢~東京・殺人ルート” の事だ(:”西京” = 西村京太郎 & “トラミス” = トラベル・ミステリー)。

 確か土曜夜の2時間枠が無くなって中断されていたシリーズの筈だが、十津川警部ものは多数の役者さんが演じている。
 記憶が正しければ、TV朝日系では初代は故・三橋達也さん(”寝台特急殺人事件” が秀逸)⇒故・天知茂さんを経て今の高橋英樹さん。 TBS系では宝田明さん⇒若林豪さん(”日本一周旅号殺人事件”)⇒故・渡瀬恒彦さん⇒内藤剛志さん、”若い時” 編としてはフジTV系で高島政伸さんが演じている。
 が、何方が演じても初期原作のイメージとの乖離が大きい。 正直、高橋英樹さんの様に格好良い刑事ものではなかった! それを “恐れる” 自分は観ないのだが、我がワイフ殿の指摘があっては放っておけない。 早送りで観た。

 出演者リストでは2番手が高田純次さん(2代目亀井刑事役)、3番目手が “財前直見” さんだった。 キャリアから言って “過去の人間模様を背負った復讐型犯人” でなくては出演の筈が無い。
 序盤では如何にも亀井刑事を嵌める犯人らしく振る舞っていたのだが・・・犯人に関係のある人物役に過ぎず、肝心の犯人役ではなかったじゃん。 何てこった!

 早見でしたが、何でああも何回も十津川警部・亀井刑事は金沢へ出向かなければならんのか・・・理解出来ないし、それにわざわざ財前さん程のキャリア女優でなくともストーリは成り立つよ・・・とさえ想ったりしました ・・・ (>_<)

ついでに:
 序盤に映し出されていた北陸新幹線 “グラン・クラス” 車内は素晴らしい! 一度は乗車経験したいもんです!
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(*1)
 20170301:ミステリの連続殺人事件に関わる "お笑い一考察" ①
 20170301:ミステリの連続殺人事件に関わる "お笑い一考察" ②

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20180924:”始め” から読むか or ”あとがき” から読むか(ミステリー読書術) [ミステリ三昧]

 昔の人は、暑さは今頃(秋の彼岸)迄と申されたそうだが、自分の経験則では10月第3週迄は夏日に襲われる事があり得る様だ。
 夜長の本格的な秋はそれからほんのちょっとしかない。
 そんな訳で読書の秋って言ったって、今、この夏の暑さに惚けた頭には軽めのミステリーが自分にはもってこいだ。

 ミステリー小説の楽しみ方はいろいろ。
 少々驚きましたが、”まず結末を読み、犯人を知った上で楽しむ” 方が結構いるらしい(日経紙2018年9月15日付け土曜特版:”私の読書術”)。

繰り返し派の方々もおられるようです:
 同日の日経紙には、A.クリスティがお好みの中野京子氏(ドイツ文学者)のエッセイがあって、繰り返し読んで “自分が何故・何処で騙された” のかを楽しみにされる方もいる:
  ”半歩遅れの読書術:旅のお供にミステリー 読み返して仕掛けを検証”

 また、三國隆三氏の様に、読み終わったとたんに、筋もトリックもすっかり忘れて、鮎川哲也氏の本格ものを繰り返し読むのを楽しみにされている方もおられる:
  鮎川哲也の論理-本格ひとすじの鬼, pp.239
  (展望社版;1999年10月20日・初版第一刷発行)

 自分を含めて大方の愛好家は “素直に始めから” が多いと想われますが、今は大昔に聴いた話では、ミステリー文庫数十冊を一括して古本として売った方がいて、それが全てに登場人物紹介欄で “犯人に〇印” をつけていたっ!・・・事があったそうです。

 買った方はどんな想いをされたのか、話題になった事がありました。 自分の様な始めからタイプの人だったら噴飯ものだったかも (>_<)


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20180815:”デ・ジャヴ”(?)に戸惑う(”生きていた男”) [ミステリ三昧]

 我がワイフ殿から ”これ、そこそこ面白い” と言われて、大昔のTVドラマを早送りで鑑賞した:
  “生きていた男”(BS-TBS;2018年4月8日・・・初回=1984年)
   主演:桃井かおりさん、(故)渡瀬恒彦氏
   脚本:(故)森瑤子氏

 多くのご家庭と同様、ミステリ物等を自動録画する様にしていて、殆どがそのままほったらかしにしているのだが、我がワイフ殿がディスク整理している過程で見つけて観たとの事だ。

 2年前に自殺した筈の兄がある日突然、妹が住む屋敷に “帰って” くる。 兄と称するが、顔・声は全く別人だ。 が、生い立ち・家族関係・趣味・交友関係その他あらゆる経歴等が兄そのもので、妹は理由が解らずに悩まされていく・・・といった筋書きだ。 ドラマ最後の場面であっと言わせる場面が仕込まれている。

 はて・・・これって “和物ミステリー” の “臭い” とか “味” が全くしない。 どこかで観た事ある話の様な気が?・・・ “既視感” っていう奴だ。

 どうしても思い出せなく、ネットであれこれ調べたところ、何と同じ題名の米国映画があった:
  “生きていた男”(:原題= Chase a Crooked Shadow;1958年)
  ヒロイン;A.バクスター
だった。 筋書きの骨格は同じだ。

 あぁ~、何と言うこと、DVD持っているじゃん! 文字通り “既視” だったのだ!
 激しくなった物忘れ症状もここまで来たかっ!・・・って、”がっくり” です (>_<)


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20180809:”名探偵” 人気ランキング [ミステリ三昧]

 欧米ミステリー・ドラマ専門チャンネルである “AXNミステリー” が、開局20周年記念として凡そ13K名から “お好み名探偵” アンケートを実施し、その結果を公開した上で現在順次放映している。

 そのランキングは
  第01位:シャーロック・ホームズ
  第02位:金田一耕助
  第03位:エルキュール・ポワロ
  第04位:コロンボ
  第05位:浅見光彦
  第06位:明智小五郎
  第07位:ミス・マープル
  第08位:三毛猫ホームズ
  第09位:モース
  第10位:ブラウン神父
だった。

 人間様名探偵に混じって “ニャン” が堂々のランクインしているのが微笑ましい。 よく見れば、浅見光彦さんとニャンを除けば皆さん “いにしえの方々” ばかりだ。 まぁ、今は名探偵さんがご活躍する時代にしては ICT(情報通信技術)が進み過ぎているとも言えるから無理も無い( 現代ロンドンで活躍しているらしい "シャーロック" は、このランキングで第一位に輝いた人とは別立てだと勝手に推測していますが・・・)。

 この結果は、わざわざお金を払ってまで海外ミステリー・ドラマをTV鑑賞している方々のお好みなのだが、自分のとは大分乖離がある。 お叱り・ご批判を承知の上で申し上げれば、なんか、どれもこれも “ミーハー的”( ← 最早 “死語” ) だなぁ(御免なさい。 m(_ _)m )。

 小説というよりもTV版ドラマ、それもシリーズで名をはせた探偵さん達ばかりで(←TV局のアンケートだから当然といえば当然)、”金田一耕助” さんなんぞはつい最近NHKBSで新作(”悪魔が来たりて笛を吹く”)が放映されたばかりだ(昨年は "獄門島" 新作が放映され、来年は "八つ墓村" がそれとなく予告されている)。 彼が活躍した時代背景を理解出来る世代は今や限られた少数派に過ぎないから、高齢者向けドラマ(?)で、まるで “紙芝居” を観ている様だったが・・・

 とは言え、地デジ/BSで再放されまくっている十津川さんとか牛尾さん、その他多数の刑事さん・弁護士さん・検事さん、更には科学捜査班の皆様方が一人も入っていないのはさすがに専門チャンネル・ファンだ。 正直、彼等・彼女らが活躍するドラマはミステリーと言うには物足りないからなぁ。 が、浅見光彦さんがランクインしているのは、ドラマ版主役俳優さんの魅力なんだろう。

 “モース警部” とか “ブラウン神父” がかろうじて9位/10位にランクインしているのは頼もしいが、これは現在も繰り返し放映中だし、少数派玄人寄りのお好みだろう(警部モースには “若かりし時代のモース刑事” も含まれているのかもしれない)。

 "C.フォイル”、”マルティン・ベック” とか “フロスト警部”、それに我が国きっての名刑事 “鬼貫(おにつら)警部” 等の名前が見えないのがとても寂しい。 どちらも派手な筋書きで活躍する訳でも無いし、TV放映の機会に恵まれているとは言えない。 M.ベックものは、今は大昔、NHKで放映されたきりに過ぎない。 自分がその時期に録画したβテープはお宝ものだ。

 これも時代の流れだ。 “身を任せる” ほか無いので、やむを得まい・・・と言う事なんですネ (>_<) 

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20180424:ミステリにおける ”キャラクター論”(偏見) [ミステリ三昧]

 "刑事モース"(原題:Endeavour)も9話(パイロット + 第1シーズン4話 + 第2シーズン4話)が終わり(NHKBS:2018年4月7日)、また再放版 "新参者(加賀恭一郎シリーズ:原作=東野圭吾氏)" 10話も終わってしまった(BSTBS:2018年4月11日)。
 刑事モースのシーズン3以降はW*W*Wの方で見なさい、加賀モノは最新作を映画で見なさい・・・と言う事なんだろうなぁ。

 TV鑑賞はあまりしない方だが、それでも楽しみの二つが無くなった自分は、整理してある手持ちビデオ・DVD等のデーターベースを眺めていたら、大昔にNHKBSで放送していた "マルティン・ベック" シリーズを見つけた。

 そうそう、こいつがあった!
 スウェーデン版警察ミステリ小説が原作で、ご夫婦作家 "M.シュヴァール/P.ヴァールー" による1965~1975年にかけてのスウェーデン社会の変わり模様も織り交ぜた傑作と評判を呼んだシリーズものだ(翻訳版を殆どを読んでいる)。
 1965年と言えば、若かりしモース刑事が警察署に入りたて時期と同じだ。
 録画版はスウェーデン国内で1990年代に(恐らくはTVドラマとして)制作されたものだった。

 北欧って行った事が無いし、恥ずかしながら地理の知識も皆無に等しいので、ドラマに出て来る地名がピンとこない。
 その上、役者さんも見馴れていない事もあって、始めの内はなかなか気持ちが入らず、加えて今のTVは画面サイズが昔の倍程度はあるから、見た目の画質落ちも大きい。
 が、登場人物の人となりと、淡々と進めていく落ち着いた捜査プロセスが丁寧に描かれており、次第に引き込まれてしまうところがうまい。

 何故か、今放送されているTV刑事物ドラマって、どうしても魅せられないんだが、どうしてだろう。
 フォイル、モースとかベックを見ていると理由は明かで(そうだ、フロスト警部も入れておきましょう)、彼等と比べると、今のTVドラマで観る刑事モノって "人間"、それも "内面" が描かれていないんですね。

 フォイル等のドラマでは、彼等の生い立ちと家族環境が仲間との繋がりを含めて緻密に描かれており、特に主人公については親兄弟・経歴・心情等が原作の設定(と言うか、原作者の設計通り)に忠実に再現されていて、おざなりなところが微塵も無い。
 加賀恭一郎シリーズに魅せられた理由もそうだったし・・・

 が、今の殆どのTV刑事ドラマにはそこが決定的に乏しいんだ。
 同じ俳優さんが局を変えて平の刑事、警部補、警部、果ては課長刑事までを一本調子で演じさせられている・・・中身が薄っぺらだからすぐに飽きちゃうんだ。

 そんな訳で、"謎解き" を純粋に堪能したい時は、所謂 "本格モノ" を本とかポケットPC等で読めむ事にしているんです。
 今や、寝る前には "黒いトランク" とか "黒い白鳥"(故・鮎川哲也氏)等、これを越える本格モノは未だ現れていないと想っている古典を繰り返し読んでいる始末です。

 いささか意味不明のブログ・タイトルで反省しております・・・なぁんて。

因みに:
 既に原作からの乖離が巨大化してしまっている "007_J.ボンド" も、初期の作品では両親・家庭・学歴・軍歴・酒肴・趣味等(含・女性遍歴)、果ては持病までもが綿密に設定されていたのです。
 シリーズものにあっては、こうでなきゃ・・・ネ

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20180317:”若かりしモース” にはまっている [ミステリ三昧]

 "刑事フォイルFoyl's War)" の再放シリーズが終わったら、今度は "刑事モース オックスフォード事件簿Endeavour )" が全9話の予定で始まっている(NHKBS)。

 "Endeavour" とは、モースの "1st Name" で、長い間謎の一つだった彼の姓名は "Endeavour Morse" と言う訳でした。

 今は昔、"主任警部モースInspector Morse)" シリーズが放映されていた(主演:J.ソウ・・・残念ながら既に故人)事があって、自分も楽しみに見ていたものでしたが、今度のシリーズは "若かりし日のモース" の活躍を描いた所謂 "スピンオフ" もの(主演:S.エヴァンス)で、英国では今やシーズン5(全4話/シーズン)が始まっているそうだ(:WOWOWでは "新米刑事モース" のタイトルで全話放映中。"主任警部モース" も)。

 1965年頃からのオックスフォードを舞台に難事件を解決していくのだが、街・いくつもあるカレッジ・教会・博物館・貴族の館・庶民の住居等を見事に描き込んでいるのが観ていて楽しく、これは主任警部モース・シリーズと同じだ。
 ここのカレッジに留学された、或いは奉職された方、更に観光で訪れた方にとっては懐かしい風景満載とも言えるかも(残念ながら自分は訪れた事はありません)。

 当時のジャガーを乗り回す姿も格好良い。
 第一、英国産のドラマでは、クルマは右ハンドル・左側通行なので観ていて違和感が無いので気が楽だ。

 原作者C.デクスターは既に故人(*) で、若かりし日のモースは新たに創作されたものだが、 "粋な作り込み" があって、同じ市警察の下っ端として登場し、第一話最後の場面で20年先の自分を鏡で観ると、J.ソウ演じた主任警部モースの顔が写る。
 主任警部モースのファンなら "たまらない擽り" だ。

   (*):昨年逝去(2017年3月21日;享年86歳)
     実は故人を悼むブログ原稿を用意していたのですが、
     何故だかPCから行方不明になったままそれっきりにしていたのです。
     あぁっ!

 モース主任警部は本国ではS.ホームズよりも人気がある探偵として知られているが、原作では最終話で没しており、残念ながら新たな続編は無い事から若かりし時代のエピソードをシリーズ化したものらしい(ミステリ好きは専門チャンネルで既に鑑賞済みでしょう)。

 クロスワード・パズルとかクラッシックのかなり高い知識を要求する内容となっているので、素養の無い自分は正直二回ほど観ないとドラマの仕掛けとか狙い筋が解りきれないのはしかたがありません (>_<)

 こう言う中身の濃いミステリって、普段なかなかお目にかからないのが残念といえば残念。
  "ミステリは本場ものに限る" なんて言うつもりはさらさらありませんが・・・
 (>_<)


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