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20230721:AIだって ”記号設置” 出来る [ただの私見]

 相変わらず学識者による "一般市民向けAI論議" が盛んで、最近では雑誌 "中央公論" 7月号に
   特集:AI時代のことば力

が組まれ、その中で慶應義塾大学環境情報科学部教授である今井むつみ氏が
  言語習得に見る知性の本質 オノマトペ・記号接地・ChatGPT

と題した小論文を書き下しておられる。

 その中で氏は
   人間とAIの違いは "記号設置" しているか否か

だと指摘されていた。 記号設置とは
   言葉⇔身体感覚や経験

を連携させる事で、本来はAI分野での専門用語だ。
 氏は、人間は言語習得過程で記号設置を獲得してきているが、AIは記号設置出来ない。 その一例として
   1/2 と 1/3 の大小関係

   ①人間は分数として理解出来る
のに対して
   ②AIは少数に直して比較する

と指摘されている。

しかし・・・:
 老生は浅学の極みだが、恐れ多くもこの説には納得しかねる。

 "足し算" & "かけ算" は出来ても "引き算" & "割り算" は苦手の人は多い。
 今ではそうそうに見かけなくなったが、ひと昔前の米欧人は物を買った時のお釣りの "瞬間計算" が出来ない方が多く、お店では渡された額になるまで売価に足し算する形でお釣りが出されてくる経験を何度もしている。 スマホ決済が普通の今はそんな景色は皆無だろう。
 "分数概念" だって、本来はいくつかの物を何人かに平等に分ける程度なら "めのこ" でも出来る。 が、数学的な扱いとなると人間にとってもそう簡単に理解出来る訳では無いと想うが、AIだって
   ケース A : 分子が同じ時⇒分母を比較して判断
   ケース B : 分母が同じ時⇒分子を比較して判断
   ケース C : 分子分母共に違う時⇒分子か分母の最少公倍数へ変換してケースAかBに直して比較判断、それが面倒な時は小数化して判断

の仕方を習得していて、"何時も小数にして比べている訳では無い"。 人間と同じだ。

 氏は
   記号設置こそが人間の創造性の根源・・・(α)

であって、
   記号の枠内で循環するしか無いAIは縮小再生産しか出来ない・・・(β)

と結論されている。

が・・・:
 "創造性の定義" 次第って処もあるものの(α)を成立させる人間は極く*2限られているから、記号設置をこの様な位置づけにするには検証事例が余りにも少な過ぎるし、(β)はAIを根拠無く過小評価し過ぎだ。
 老生は、AIだって人間同様に学習経験で記号設置を出来、人間が及びもつかない "発明/発見" をしていくと考える。
 何故なら、大体が対話生成AIの基底となっている "大規模言語モデル" とは "学習経験" そのものであり、人間が言語習得していく過程と決定的に違うとの証明は一切成されていない筈だし、今後共に人智を超えている領域は増えていくばかりで、減る事は決して無い。
 加えて、人間の学習経験は個人の能力に依存するが、AIの学習経験は限りなく復元&拡大可能だ。

 老生は、氏が
   あの時の論文は結論を急ぎ過ぎた

とそう遠くない先に訂正されると、誠に僭越ながら確信している。

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