SSブログ

20200705:”80%接触削減” の論点とは(”西浦モデル”@コロナ禍) [ただの私見]

 以下長文につきご留意下さい。
 今回のコロナ禍の最中、感染拡大を防ぐ為には
  "80%接触削減"

が必須とされた。
 その根拠となった "理論免疫学" がご専門の教授が組み立てた "西浦モデル" をザッとだが自分なりにフォローしてみた(巣ごもり中の老生には、この程度の "暇つぶし" 時間だけは充分にあった訳です)。

 モデル計算式の詳細は同教授(@北大院)のウェブサイトに掲載されているし、他の学識者の方々がネットでも十二分に開示&議論されている。
 複雑な "理論" 式と言う訳では決して無い。
 この分野に素人であっても、理工系で自らプログラミングして数理シミュレーションを行った経験者なら容易にフォロー可能・・・と言って差し支え無い。
 加えて Newsweek誌日本語版(2020年6月9日号)にコロナ禍 "日本モデルの検証特集" が組まれていて、誠に失礼な言い方だが、同教授の "弁解" じみた解説文が掲載されているのも参考になる。

フォローの結果だが・・・:
 仮定で入力するパラメターが結構あって、その設定次第で "どんな結論" も "自由自在" に操る事が出来る(;この種のパラメターを "adhoc Parameter" と言う事もある。つまり実際の現象を再現させる様に調整する "合目的助変数" って奴です)。
 まぁ、シミュレーションの宿命ではあるのだが・・・だからこそ、仮定/前提の明示が重要なのだが、政府専門家会議、或いは厚生労働省クラスター追跡班からの説明/開示は無く、
  "理論ではこう"

との結果だけの公表だった様に記憶している。
 ついでに申せば、理工系数理シミュレーションの世界では
  ”絶対にあり得ない"
公表の仕方だ。

さて結論だが:
 80%接触削減の最大根拠は "基本再生産数" をドイツ人感染学者が公表している論文での採用値=”2.5”(新型コロナウイルス感染能:1人⇒2.5人)を無批判的に "鵜呑み" にした結果に過ぎない( 辛辣な言い方だが、"輸入学問" によく観られる典型例の一つとも言える)。

 この "2.5" が我が国に於ける感染実態を反映させ得るのかどうか、極めて疑問だ。
 第一に、容易に変異を繰り返すRNA型コロナウイルスの感染能が人種の異なる欧州人と日本人で同じとする病理学的な根拠は何処にも無い。

 第二に、感染者(より正確にはPCR検査陽性確定者)数の推移から推定して、80%接触削減には遠く及ばない緊急事態宣言が出された4月7日時点で既に "実効再生産数<1" であって、実質的には感染ピークを "とっくに" 過ぎていた事から、"モデルの組み立てが正しいとすれば" 大元の "2.5は過大設定" だった事になるのだ。
 因みに、感染症を専門とする学者とか、核物理学を専門として超大量データーの統計的分析をお得意とされる学識者によれば、感染ピークは3月下旬、例の連休を過ぎてから数日後辺り・・・って推定されている。

 現実には、接触削減は宣言前の精々50~60%程度でも実効性があった事になる(*1)
 ましてやその後に "宣告" された接触削減が実現されなかったら
  "死者40万人超"

なんて事はあり得ない話だ。
 この "40万人説" に対しては、多くのアカデミアの方々がそれぞれのシミュレーション、或いは統計分析を通して否定している事でもあった。

理論モデルとは言いながら・・・:
 理論では設定し得ない曖昧パラメターが幾つもあって、可能性のあるケースを複数シミュレーションして提示すべきだったと考える。
 同教授は厚生労働省内に設けられたクラスター追跡班でご活躍されたが、政府専門家会議にも陪席されており、専門家の委員先生方はこの西浦モデルに対する "深掘り" が出来なかった様だ。

加えて:
 既にピークアウトしていたにも関わらず、
  "ここ1~2週間が感染爆発発生有無の瀬戸際"

なる発言も不確定性を抱えたモデル計算の結果に基づいていたとすれば、厳し過ぎる事を承知の上で申し上げると "言い過ぎ/脅かし" と指摘されても反論出来ないのではなかろうか(⇔本当のところ、"無責任" と言いたい位だ)。

 学識者が政府に提言こそすれ、国民に言うべきコメントでは無かったと考える。
 但し、国民に喚起させる "方便" として政治家が言うのは "有り" かも知れ無い(だが、安倍総理大臣の ”最大80%/極力70%” の削減要請は、背景を理解した上でのご発言とは想えない・・・と、自分は感じている)。

3月央~下旬には・・・:
 志村けんさんの入院、そして死去(3月29日)が報じられた事もあって、国民の多くは "事の重大さ/深刻さ" を身近に感じて自覚し、既に自粛モードに入っていたのだと想える。
 小池都知事が
  「この死去によって多くの国民が新型コロナウイルスの脅威を
  身近に感ずるのではないか」

・・・って意味の事をインタビューで答えておられ、記憶が正しければ蓮舫氏を筆頭にこの言い分を批判する方々も多かったが、実は "核心" をついたご発言だったのだ。

 結果論に過ぎないが、私ら日本人の国民性からして、極言すれば
   "何も緊急事態宣言は必要無かった"

とも言い得る可能性すらあるのだ。

皮肉にも:
 宣言を解除し、次いで駆け込みの様に東京アラートも鳴り終わり、経済再開へ向かったからこその "反動" で自粛モードが崩れ去り、その結果が最近の東京都及び周囲3県の感染者数急増となって顕在化していると言えそうだ。
 気が緩んでしまった今、今後に感染者数が減少に転ずる要因は見当たらないが、国も都も経済優先へ舵を切り替えたのだから "覚悟" しているのでは無かろうか。
 "なんとか、かんとか" 理屈をつけて、再度 "強烈な自粛要請" へ戻る事はあるまい。
 "本音" は、
  - 感染者主体の若手は多くは軽症で済むし、
  - 致死に至るのは圧倒的に年金生活者

・・・とでも想ってるのではなかろうか( (>_<) )。

それはそれとして:
 9月以降に再来襲必須と言われている "第2波" にはどう対処するのか、"第1波" での失敗/失政を "素直" に直視し、同じ轍だけは踏まないで欲しい・・・切にそう想う者であります。

 今後は専門家会議に変わって政府の正式な組織の下で幅広の学識者/有識者等が参画する分科会が発足するらしいが、これには是非ともビッグデーター数理解析の本質にお詳しい方も加わって欲しいものだ( ← ネットで感じた限りでは、西浦モデル及びその適用方法については多数の学識者が疑問を感じている)。

加えて:
  "何故に日本の基本再生産数が米欧対比で低い可能性があるのか"

については免疫学的にでは無く、"病理学" 的な解明をアカデミアに期待したいものだ。
 それが山中教授が指摘されている "ファクタ-X" を明らかにするのだろうと想うのです。
-----
(*1):偶然でありますが、森永卓郎教授@獨協大学によれば、日本の場合 "1.5" と仮定すれば実態を反映/説明可能と指摘しておられた(報知新聞社:2020年6月28日)。
 コロナ禍当初の段階で、80%接触削減では不十分で "90%超" が必要と主張された学識者もおられましたが、全くの的外れシミュレーションでした(名誉の為にお名前&ご所属は伏せてきます)。



共通テーマ:日記・雑感