20220612:冷静に、かつ正しく評価したい(持続可能航空燃料) [ただの私見]
誰が言い始めたのか察しは付くが、旅客機を利用した移動は他の移動手段と比較して二酸化炭素排出量が特段に高く、いわゆる環境派の方々から "飛び恥"( "Flight Shame" )と呼ばれている。
そんな事から特に西欧での関心の高い持続可能航空燃料(SAF)への取り組みが、我が国でも国のプロジェクトとして推進されている一方、民間側の一歩踏み込んだ実用展開への動きが盛んだとの事:
"低炭素航空燃料"
国内で供給網-伊藤忠、エティハド航空と契約
(日経紙:2022年6月4日付け朝刊)
この記事によれば、原料として所謂 "バイオマス"(生物資源)を使ったSAFとして
廃食油(日揮・コスモ石油等)・・・①
都市ゴミ(丸紅・ENEOS等)・・・②
木質バイオマス(JERA・東洋エンジ等)・・・③
サトウキビ(三井物産・ANA等)・・・④
の取り組みが紹介されている。
が・・・:
①~④を眺めて気がつくのは、研究としてなら可能な原料バイオマスであっても①~③、特に②&③はその回収工程の構築が経済的に超難問と言う事だ。
④の様に資源穀物として栽培されたバイオマスであればその難問はクリアできるが、我が国でのこの種のバイオマス栽培は実質不可能だ。 因みに、この種の取り組みにおいて我が国で利用可能なバイオマスは "古紙" とか "古米/古古米" に留まるとは、今は大昔に農林水産省自身が調査の結果として認めているが、今では国にも忘れ去られているようだ。
対して、記事見出しの伊藤忠が手がけるのは、ネステ社(@フィンランド)が製造した廃食油や獣脂由来SAFを販売するとの事で、上記のように国内で製造する訳では無い。 フィンランドにおいて原料とするバイオマス(廃食油や獣脂)をどの様な仕組みで商業ベースで回収しているのか、大変に興味深いのだが・・・
ところで:
現在の航空燃料、特にジェット燃料はガソリンとかバイオエタノールとは異なり、ケロシンの様な炭化水素が主原料で、航空機だけにエンジン不調の要因であってはならないから、厳格な品質規格が定められている。
その上に・・・:
バイオマス由来だからと言ってSAFが石油由来航空燃料と対比して二酸化炭素排出量が低い事が "無条件に保証される訳では無い" 事に留意したい。
問題はバイオマスからアルコールを合成する迄の工程に加えて、更に "ジェット燃料組成への変換工程" を必要とする事だ。
全工程を含めて本当に持続可能なのかどうか、詳細なLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)が必要だが、不思議な事に国内外でその詳細な評価結果が公表され、課題指摘/解決への道程迄の情報が共有されているのか極めて怪しい。
"余剰" 或いは "資源" バイオマスに恵まれた "限られた地域" ではあるが、その地域での燃料用アルコール製造が持続可能である事はほぼ証明されていると確信して良い。
が、それを交通機関の燃料として使用する場合には、使用する条件次第で持続性を保持可能か、そうはならないのかが決まる。
SAFについても海外勢の言いなりにならないで、冷静な判断を持ちたいものだ。 特にEUの決まり事は、自らに好都合な規格優先で切り拓いていくのが殆どだから、鵜呑みにしてはいけない・・・と老生は捉えております。
因みに:
LCAに基づく低炭素化社会への移行については、1980年代から2000年頃迄にかけてEU域内で極めて活発な研究が進められてきたが、今世紀に入ってからは "表部隊" に登場しなくなった・・・オランダの名門大に在職する当該分野研究第一人者の "ぼやき" を知っている人は少ない様です。
そんな事から特に西欧での関心の高い持続可能航空燃料(SAF)への取り組みが、我が国でも国のプロジェクトとして推進されている一方、民間側の一歩踏み込んだ実用展開への動きが盛んだとの事:
"低炭素航空燃料"
国内で供給網-伊藤忠、エティハド航空と契約
(日経紙:2022年6月4日付け朝刊)
この記事によれば、原料として所謂 "バイオマス"(生物資源)を使ったSAFとして
廃食油(日揮・コスモ石油等)・・・①
都市ゴミ(丸紅・ENEOS等)・・・②
木質バイオマス(JERA・東洋エンジ等)・・・③
サトウキビ(三井物産・ANA等)・・・④
の取り組みが紹介されている。
が・・・:
①~④を眺めて気がつくのは、研究としてなら可能な原料バイオマスであっても①~③、特に②&③はその回収工程の構築が経済的に超難問と言う事だ。
④の様に資源穀物として栽培されたバイオマスであればその難問はクリアできるが、我が国でのこの種のバイオマス栽培は実質不可能だ。 因みに、この種の取り組みにおいて我が国で利用可能なバイオマスは "古紙" とか "古米/古古米" に留まるとは、今は大昔に農林水産省自身が調査の結果として認めているが、今では国にも忘れ去られているようだ。
対して、記事見出しの伊藤忠が手がけるのは、ネステ社(@フィンランド)が製造した廃食油や獣脂由来SAFを販売するとの事で、上記のように国内で製造する訳では無い。 フィンランドにおいて原料とするバイオマス(廃食油や獣脂)をどの様な仕組みで商業ベースで回収しているのか、大変に興味深いのだが・・・
ところで:
現在の航空燃料、特にジェット燃料はガソリンとかバイオエタノールとは異なり、ケロシンの様な炭化水素が主原料で、航空機だけにエンジン不調の要因であってはならないから、厳格な品質規格が定められている。
その上に・・・:
バイオマス由来だからと言ってSAFが石油由来航空燃料と対比して二酸化炭素排出量が低い事が "無条件に保証される訳では無い" 事に留意したい。
問題はバイオマスからアルコールを合成する迄の工程に加えて、更に "ジェット燃料組成への変換工程" を必要とする事だ。
全工程を含めて本当に持続可能なのかどうか、詳細なLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)が必要だが、不思議な事に国内外でその詳細な評価結果が公表され、課題指摘/解決への道程迄の情報が共有されているのか極めて怪しい。
"余剰" 或いは "資源" バイオマスに恵まれた "限られた地域" ではあるが、その地域での燃料用アルコール製造が持続可能である事はほぼ証明されていると確信して良い。
が、それを交通機関の燃料として使用する場合には、使用する条件次第で持続性を保持可能か、そうはならないのかが決まる。
SAFについても海外勢の言いなりにならないで、冷静な判断を持ちたいものだ。 特にEUの決まり事は、自らに好都合な規格優先で切り拓いていくのが殆どだから、鵜呑みにしてはいけない・・・と老生は捉えております。
因みに:
LCAに基づく低炭素化社会への移行については、1980年代から2000年頃迄にかけてEU域内で極めて活発な研究が進められてきたが、今世紀に入ってからは "表部隊" に登場しなくなった・・・オランダの名門大に在職する当該分野研究第一人者の "ぼやき" を知っている人は少ない様です。