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20221002:ニャン落下問題 [ニャン]

 どうしようも無い長文ブログなのでご注意下さい。
 お時間あればどうぞ。

 背中を真下に向けて落下させても "常に" 正しく "四つ脚着地" するニャンの天性は
   "Falling Cat Problem"

として、ここ150年来に渡って "幾ばくか" の物理学者を悩ませてきた問題として知られている。

 ご興味あるお方なら既にYoutubeで国内外の科学解説者による説明をご覧になっておられるかも。 あの "でんじろう先生" も解説されています。
 またネットで探れば理論物理学的論文や、物理工学的ロボット開発論文等にも辿り着けますし、その中には我が国の研究者等による論文が和文で読める時代です(中には卒論/修論/学位論文を想わせるものもあります)。

ところで:
 最近、この問題解決に向けての歴史的な取り組み経緯と最新状況を詳細に紹介した書籍の邦訳版が発刊されました:
   G.J.グバーニ:
   「ネコひねり問題」 を超一流の科学者たちが全力で考えてみた
   訳:水谷淳(ダイヤモンド社刊:2022年5月31日第一刷発行)

 タイトルが長ったらしいけど、原題は
   "Falling Felines & Fundamental Physics"

で、真面だ( "落下するニャンと基礎物理学";初版2019年 )

 奇を衒った感じの邦題はキャッチ・コピーのつもりだと想うものの、本文の方は冗舌過ぎるきらいはあるけど、ウイットにも富んだ解説書で楽しい。
 なんと500ページ近くの分厚い( ca.A5版;3cm超! )書籍ながら、驚くべきはそれが低価格(¥2K以下)な事だ。

 全編を読み通す事は簡単だが、それを全て読みこなした上で "理解/納得"する事は、実は容易ではない・・・とは老生の読後感だ。

 最も "理解し易い" 物理モデルとして
   ニャンを "前半身と後半身に2分割" して
   それぞれを "剛体円柱" と見立てて連結

させ、連結全体の回転と二つの円柱の各回転を独立させた系の力学解析をして、脚着地を説明する。
 このモデルは、古典力学を修めた理工系学生であればフォローしきれるレベルと想われるが、当のニャンに取ってみれば
   勝手な "見立て" をすんニャいっ!
   オレっちの身体は、とてつもなく柔らかいのだニャ

って言いたいところに違いない。

 ニャンを初め動物は、食物等から得たエネルギーの一部を使って名称が示す通りに身体を動かすので、エネルギーの出入りがあり、単純力学モデルの様な孤立系では無い。
 高い所から放り出されれば身の安全を図る為に内耳にある平衡感覚認識器官を使って直ぐさま姿勢制御する本能が働く筈だ。
 そこ迄を考慮すると上記の様な単純力学系ではこの問題には取りかかれない・・・ので、"本質" と想われるエッセンスだけを抽出・抽象化した後に物理法則に則って解析する事にならざるを得ない。
 このモデルでは "独立に回転" ・・・ ってとこが "ミソ" と言うか、 "肝" で、そうさせないと初めゼロだった角運動量が落下過程で有限になっちまって、その "保存則" が破れてしまうからだ。

 エネルギーとか角運動量保存則・・・等々の "保存則" は物理学における大々命題で有り、祝詞みたいなもんで、これが成立する様に対象となる系を "拡張" していくのがこれ迄の歴史であり、言わば常道だ。
 横道に逸れる余談だけど、例外は勿論ある。
 "β-崩壊" に於ける "左右保存則の破れ"( "パリティ非保存" )はその典型例の一つと言える。
 この可能性を指摘したリー&ヤン氏お二人の米国在住中国人素粒子学者の論文は、あの "Pysical Review" 誌の僅か2ページ足らずだった(1956年)が、同じ米国在住の中国人(C.S.ウー女史)の実験的確証(1957年)を得てノーベル物理学賞を授与されている(1957年)。 但しその実験を行ったウー氏には授与されず、
   理論屋は得だ/実験屋は損だ

と呟いた事が知られている(今なら "ツイート" で大炎上していたかも)。

元に戻って・・・:
 上記の力学モデルを提案した著者は、その論文の中で
   ニャンであってさえも物理法則を破る事は出来ない

と、厳正厳粛な学術論文雑誌に記している事に微笑んでしまう。

 ニャンの方は
   そんな事知るかっ!
   オレっちを勝手に落とすニャッ!

って言いたいに違いない。

 この問題は、連結体の可能な配位に関わる位相幾何学的な問題へ発展して、今でも最新の研究成果が学術論文として投稿されていて、一見しただけでは院生であっても相当手こずるレベルの内容だ。 正直なところ、老生にはもうフォロー仕切れない。

ついでに:
 海外の解説動画では、
   ニャンの前後の脚を両手で鷲づかみ、
   1.5m程の高さに持ち上げて
   背中を地面に向けて手離す

のが多いが、これって "ニャン虐待" にならんのか?

更についでにだけど:
 引用書籍には
   ニャンはどれだけの高さから落下しても怪我しないか

なんて残虐過ぎるとしか想えない "実験" 結果が紹介されていて、ニャン・ファンは
   何てコトしやがるっ!

って、"読みながらも憤慨" するのだ。
 米欧人って結構 "ヒデーこと" すんなぁ・・・
 彼等彼女等の動物愛護運動なんて信用ニャらない?・・・そんな気さえしてしまう。 それとも、イルカとか鯨と違って、ニャンならそんな事していいんか?
 そんな事、許さんぞっ!・・・って言いたい。

更に加えて、昔からの私見だが・・・:
 ニャンを落下させる時だが、ニャンだって人間様と同じで上下(頭部&尾)&左右均等な骨格&内臓配置では無い。
 その上、人間はどんなに注意深く手放しても、上下左右に完全水平を保った手放しは出来ない。
 従って、重力下で "自由" 落下するニャンは、重力加速度の働きで体軸を中心とする回転し易い方向が僅かながら発生している筈で、既往力学モデルの初期条件とは大きく異なる筈だが、これについての考慮は一切なされていない。

そう言えば・・・:
 この問題が話題になり始めた初期の頃には、人が手放す時にニャンがその人の手を脚で押し退ける様な "狡"(ずる)をして初期回転加速度を得ている・・・と捉える学者等が多かったそうだが、高速度撮影によってこの説は退けられたと冒頭の書籍には紹介されていた。
 フゥ~ンだ。 人の手に超高感度の圧力センサーをつけて計測しなけりゃぁ、映像だけでは検証にはならないよ・・・と老生は想う。

現実のニャンの重力下落下問題は・・:
 人間様が千差万別である様にニャン様も千差万別で、たった一つのモデルで解明しきれる問題では無い・・・と想っていたら、原著者もそう言っているので、この点についてはこの書籍に "納得" したところだ。

因みに:
 NASAが公開しているのだが、急激な降下で見かけ無重力空間を発生させた航空機内でニャンを手放すと、4本の脚をばたつかせて空間を "遊泳" しているのが見て取れる・・・これは "虐待" とは想えニャい。 まぁ、"許せるニャ"。

最後に:
 紹介書籍には、量子力学の創設者の一人であるところのシュレンディンガーが提示したニャン問題(例の "シュレディンガーのネコ" の事です)も引用していて、およそニャンが関わる物理学的トピックスを網羅的に扱っているのが楽しい。
 こう言う "洒落の解る" 科学解説者・・・我が国にもいればニャァ・・・と想わずにはいられない。

 どうでも良いブログ・・・老生としては楽しく書き下せましたが、最後迄お付き合い下さり、有り難う御座いました。
 m(_ _)m

尚・・・:
 念の為ですが、高齢化とか過剰体重とかで
   ニャンだって "失敗" する事が無いとは言えないニャ。

 だもんで、
   試さないで下さい

ます様、よろしくお願い申しあげます。