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20210421:”EV” は本当に ”環境に優しい” のか [雑感]

 自分は半世紀以上クルマを保有し運転するが、ガソリン車(仮に "GV" と略称)だ。
 ほぼ20年間乗り続けた車を3.5年前に乗り換えた時、EVも検討したが、地政学的に課題を含む Li-イオン電池に疑問を持っていた事もあって試乗さえしなかった(但し、以下を含めて Li-イオン電池と言っても "車載" 用に限っての話です)。

さて:
 これ迄ガソリン車のLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)を手がける方も多かったところ、最近になってEVについても Li-イオン電池の生産及び充電を含めたLCAが出始め、GVとの比較論議が出来る様になった。
 つまり、ガソリンもそうだが、Li-イオン電池についても正極/負極素材や電解液素材を原料として採掘する所からEV用製品として出荷される迄の資源環境負荷が評価される様になって来たのだ。

その代表的な結果だが・・・:
 GV&EVにつき、標準的な使用状況を設定して環境負荷をGHS(グリーン・ハウス・ガス:温室効果ガス)で見積もると、EVがGVよりもGHGが少なくなるのは走行距離で
  日本においては:11万km以上
  米国:6万km以上
  EU:7万km以上
が必要だったそうだ(概略:日経紙:2021年4月11日付け朝刊サイエンス紙面)。

 EVの Li-イオン電池の寿命がどの程度なのか、仕様&使用状況次第と言う事もあろうが、自家用車の買い換えサイクルを大凡10万kmとすれば、セカンドユースの状況次第になってしまう。 無条件でEVの環境負荷がGVに勝ると言う訳では無い。 

 確かにEVは走行時に限ってGHGを排出しないが、電池生産時、及び充電時の負荷が無視出来ない訳だ。
 特にGVの燃料効率の良い日本車の場合、それも我が国での走向の場合、EVは実質上は火力発電由来電力を使用して充電する事からその優位性には厳しいところがある。 因みに、米国の場合はGVの燃費が低い、EUの場合は非火力発電由来電力が普及している事が我が国に於けるよりも必要走行距離が少ない背景になっている。 つまりは、"EVは国を選ぶ" ・・・ と言う事だ。

 やはり "予感" は正しかったか。
 我が国の場合、EVが優位に立つには、少なくとも非枯渇性由来電力、所謂 "再生エネ" 類があまねく普及する事が前提になりそうだが・・・残念ながら無理じゃネ?
 2030年からはGVの新規販売を禁じちゃう・・・なんて国は宣言しているけど、それ迄に再生エネルギー・システムの整備出来んのだろうか。

それに・・・:
 商用車をGVからEVに換えて脱炭素・・・と意気込む企業(事例:日経紙:2021年4月14日付け紙面朝刊企業2紙面:”物流企業の脱炭素加速” )には敬意を表するが、水を差す訳じゃぁ無いけど、意味&意義のある利用方法/状況をも開示して欲しいもんだ。

ついでに:
 LCA専門家のシミュレーションでは、全世界のクルマがEVになっても、全世界の電力生産が今のままではGHG排出量で観る限り "減る可能性は低い" (むしろ増える)との指摘もある。 温暖化防止に向けてはクルマだけの取り組みでは駄目だと言う事になる。

 取り分けエネルギー事情が厳しい我が国の場合、2050年迄の完全 "脱炭素" 社会実現には大胆な "産業構造自体の変革(パラダイム・チェンジ)" が必要では無かろうか。 脱炭素化は、単なる環境対策では無く、産業構造自体を換える事を意味するので、既存権益勢力で固められた今の政治体制で果たして可能かどうか疑わしい。
 現下のコロナ禍で見せつけられた現実、即ち、国難時にもかかわらず平時体制から変われない政治体制だから、今こそ政治家の不退転の覚悟が求められる時だと想うが、些かも希望の灯は見えないのは老生の悲観主義が復活したのか。
 寂しい限りだ。

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